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February 19, 2015

風の歌を聴け

Haruki今さらですが村上春樹さんの経歴を検索してみたら、京都生まれで兵庫県西宮市育ちでした。西宮は私が学生時代遠距離通学したなつかしい場所。そんなことを頭に入れながら「風の歌を聴け」を読んでみると、主人公の「僕」が帰省した夏の場面の風景描写が、いつも以上に鮮明。これはきっとあの川沿いのことだとか、これはあの坂道?なんて・・村上ワールドがえらい身近(*^_^*)
村上さんの年齢からすると、私が過去にそこで村上さんとすれ違ったというようなことはなかったのだろうと思うけど、そういうことを想像するのは夢があっておもしろいな。

もちろんいつも通り「風の歌を聴け」も、物語がつかみにくいし、いやらしい描写もたくさん。でも「海辺のカフカ」と同じくらい好きだなと思う。

いつも感じている、過ぎゆくばかりの時間や、出会い別れゆく人達・犬達への寂しさや哀しさやつのる懐かしさ。でも今、少しそれを横に置いといて、始まりも終わりもなく永遠に続く風の歌に耳をすませてみよう。

ー「風の歌を聴け」よりー

暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえもみない。」
死んだ祖母はいつもそう言っていた。祖母が死んだ夜、僕がまず最初にしたことは、腕を伸ばして彼女の瞼を閉じてやることだった。僕が瞼を下ろすと同時に、彼女が79年間抱き続けた夢はまるで舗道に落ちた夏の通り雨のように静かに消え去り、後には何ひとつ残らなかった。

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病院の窓からは港が見えます。毎朝私はベッドから起き上がって港まで歩き、海の香りを胸いっぱいに吸い込めたらと・・想像します。もし、たった一度でもいいからそうすることができたとしたら、世の中が何故こんな風に成り立っているのかわかるかもしれない。そんな気がします。そしてほんの少しでもそれが理解できたとしたら、ベッドの上で一生終えたとしても耐えることができるかもしれない。

僕がこの手紙を受けとったのは昨日の3時過ぎだった。僕は局の喫茶室でコーヒーを飲みながらこれを読んで、夕方仕事が終わると港まで歩き、山の方を眺めてみたんだ。君の病室から港が見えるなら、港から君の病室も見える筈だものね。山の方には実にたくさんの灯りが見えた。もちろんどの灯りが君の病室のものかはわからない。あるものは貧しい家の灯りだし、あるものは大きな屋敷の灯りだ。あるものはホテルのだし、学校のもあれば、会社のものもある。実にいろんな人がそれぞれに生きてたんだ、と僕は思った。そんな風に感じたのは初めてだった。そう思うとね、急に涙が出てきた。泣いたのは本当に久し振りだった。でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。

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