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March 24, 2010

偶然の旅人

353424BLIND WILLOW, SLEEPING WOMAN :Haruki Murakami

外国読者むけに出された短編集の日本版。24の短編小説が入っています。村上春樹さんというと長編小説というイメージなのですが・・彼にとって、長編小説を書くことは「挑戦」、短編小説を書くことは「喜び」であって、この二つの作業がお互いに補充しあって一つの重要な総合的な風景を作りあげているのだそうです。

そんな前書きに続いて、次々と短編を読んでいくのは、いつもの長編を読むのとはまた違った楽しさがあります。「蛍」という物語はあの「ノルウェイの森」のもとになったもの。小さな「ノルウェイの森」を読んでいると、映画化されるその物語が、どんなふうに描かれているのだろうかと、さらにさらに楽しみになってきました。

印象に残ったのは「偶然の旅人」。作者が実際に体験した不思議な出来事について書かれています。

読み進みながら、自分が同じように体験した似たような出来事をたくさん思い出していました。それは、とるに足らないようなこと、人生を大きく変えるようなこと等色々ですが・・そういうことを私が真剣に話せば話すほど、自分の感じているものとは違うものになっていくような感覚がいつもあって、結局、だれにも何も伝わらないまま、いや、伝えられないままかな?いつのまにかそれをあきらめて、それについては話すことをしないようになりました。

「偶然の旅人」を読んでいて、今までの自分のそういう気持ちが整理されていくような気がしました。作者も私と同じような思いを感じながら、この物語を書いているということが特に・・私をそういう気持ちにさせてくれました。

偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうかって。つまりそういう類のものごとは僕らのまわりで、しょっちゅう日常的に起こっているんです。でもその大半は僕らの目にとまることなく、そのまま見過ごされてしまいます。まるで真昼間に打ち上げられた花火のように、かすかに音はするんだけど、空を見上げても何も見えません。しかしもし僕らの方に強く求める気持ちがあれば、それはたぶん僕らの視界の中に、ひとつのメッセージとして浮かび上がってくるんです。

私は何度も目撃しました。私はそれに感動したり驚いたり感謝したり導かれたり・・でもそれは、私にとってだけ意味を持つものだから・・だれにも見えない。

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