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October 02, 2009

終の住処

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【終の住処(ついのすみか)】磯崎憲一郎

芥川賞受賞!と書かれた帯がかかっているのですが、100ページ程の短編で1時間もあれば読めてしまいました。青空を背景に荒れ果てた家が映っている表紙の写真が印象的です。物語は・・なんだかあきらめきったような夫婦、子供を介してしか会話ができないまま過ぎていく時間。子供連れで出かけた遊園地で観覧車から眺めた自分達が住んでいる町の景色。それから突然11年間、口を利かなくなった妻。。という感じです。

私自身のことですが・・若い頃、遊園地大好き人間でした。それこそありとあらゆる遊園地に行きました。観覧車にもたくさんたくさん乗りましたが、今思い出してみると観覧車からの眺めをほとんど覚えていません。若い私は高いところから遠くを眺め楽しむという感性に欠けていたのかもしれません。ただただ大きな観覧車に属している小さなひとつの空間の中にいることだけに満足していたのかもしれません。自分のすぐ前しか見てなかったけど、ものすごく楽しい時間だったことだけは覚えています。そしてこの物語との大きな違いは、観覧車を降りてからも、私の(私達の)会話は途切れなかった・・ということ。

人生においてはとうてい重要とは思えないもの、無いなら無いに越したことはないようなものたちによって、かろうじて人生そのものが存続しているのだった。

記憶に残っているのは、残っていくのは、特別な日や特別な出来事ではなくて、なんでもない一瞬のなんでもない場面やしぐさや言葉であったりする。そういうなんてことない小さなものが、ずっとずっと心に残って光を発し続ける。私にとっては、あの時の観覧車を忘れることはないし、あの時の一日がこれからの人生よりもずっとずっと大きい存在であり続けるのだろうと思う。そしてこれから先においてもそういう瞬間に出会えるような、やわらかな日々を大切にできる自分でありたい。

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Comments

どうも!
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あの時の一日がこれからの人生よりもずっとずっと大きい存在であり続けるのだろうと思う
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僕は年をとってきて、ちょくちょく鮮烈に、特に最近思い出し、昨日もあなたと同じように思っていたシーンがあります。

20代前半、青春時代のどまんなか、もうなにもかも終わりにしようとおもったとき日本海の夏の海辺でであったシーンですねえ・・・

海水パンツの青年が、テントを日陰にして何か書き物をしていて
時々、水中銃をもって海に入って行き、大きな魚を突いてあがってきて、また書き物に没頭する・・・・・そんなことをじっと見ていました・・・・・・・

それ以来僕は違う人生を生きようと思ったに違いないんです。
その6年後、同じようなシーンを僕がしていることになったり(笑)

Posted by: 風折留亭 | October 05, 2009 at 03:37 PM

風折留亭さんの大切な思い出
お話しして下さってありがとうございます(^^)
なんだか映画のワンシーンのようです。
その場面に登場する二人の青年の心のうちを
私には想像することはできませんが・・
コメントを読んで
わけもなく心があつ~くなってしまいました。

遠い過去のそういう場面を
大切にされている風折留亭さん
素敵だなぁと思っています、いつも・・
記憶が今を作りそして
未来への夢へと続いていくのでしょうね。

Posted by: yumi | October 06, 2009 at 03:05 PM

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